今年の初め、インターネット上で話題になった動画がありました。それは、あるユーザーが自宅で使っている1997年製の洗濯機を公開し、「97年の洗濯機、おそらくメーカーはもう潰れただろう」とコメントしたものです。

このSNSの動画が公開されると瞬く間に多くのユーザーが集まり、話題となりました。何しろ、26年も使っている洗濯機がまだ正常に動くなんて、まさに現代テクノロジーへの「逆風刺し」です。

しかし、誰が予想したでしょうか。ユーザーたちが自宅の古い家電をネタにコメントを書き込んでいたところ、なんと動画の主役が自らコメント欄に現れ、「うちが潰れたって言いふらしてるって聞いたよ?」とユーモアたっぷりに返信し、さらに新品のドラム式洗濯機をプレゼントしたのです。

瞬く間に、洗濯機ブランド「威力」に関する話題がトレンド入りし、ユーザーたちが情報を調べて驚きの声を上げました。「威力、潰れてなかったんだ。むしろもっと輝いてる!」

その通りです。長い発展の中で、かつては一部の老舗国産ブランドのように倒産の瀬戸際で苦しんでいた「中国洗濯機の王者」は、どん底を乗り越えた後、グローバル化の波の中で蘇り、海外市場に進出。越境ECとソーシャルメディアマーケティングによって、海外市場からの喝采を勝ち取ったのです。

その海外進出の物語は、人々に感慨を与えるだけでなく、多くの伝統的ブランドの変革に貴重な示唆を与えています。

出典:威力電器官網

かつての「洗濯機の王者」は、なぜどん底に落ちたのか?

威力電器の輝かしい歴史は1979年に遡ります。当時、それは中山东菱威力電器有限公司の小さなブランドに過ぎず、洗濯機や冷蔵庫などの家電製品の生産に特化していました。

その頑丈で長持ちする二槽式洗濯機のおかげで、威力は瞬く間に国内市場を席巻し、1989年から1996年まで洗濯機の生産・販売台数で連続トップを記録しました。

1994年には、年間販売台数163万6000台という記録を打ち立て、翌年には国家から「洗濯機の王者」の称号を授与されました。

当時の威力は、まさに国内洗濯機市場の代名詞でした。

想像してみてください。あの頃、どれだけ多くの家庭が威力の洗濯機で、一世代全体の記憶を洗い出していたことか。

しかし、市場の需要が変化するにつれて、威力は時代の流れに追いつくことができませんでした。全自動洗濯機やドラム式洗濯機が台頭する一方で、威力は依然として伝統的な二槽式デザインに固執し、その製品は次第に市場競争力を失っていきました。さらに、国内家電市場の激しい競争も相まって、威力は徐々に遅れをとり、どん底に陥りました。

2005年、威力は160億円の負債を抱え、広東東菱凱琴集団に買収されました。この出来事は、威力の「幕切れ」を示すかのようでした。しかし、これは実際には変革の始まりでした。

静かなる海外進出:威力のグローバル化への変革

「国産ブランドは死なず、むしろもっと輝く。」威力洗濯機の逆襲の道は、まさにこの信念のもとで展開されました。

買収後の威力は、抜本的な改革を断行し、特にグローバル戦略において大胆な試みを行いました。

エアコン事業を切り捨て、組織構造をスリム化し、長年の技術蓄積と広東東菱凱琴集団のリソースを活用して、一気に欧米スタイルの小型家電市場に参入し、越境ECで海外進出を果たしました。

その後、威力は迅速に展開し、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジなどのコア製品を海外市場に投入しました。同時に、ブランドの再構築も開始し、新しい海外ブランドKumioを立ち上げました。

Kumioという名前は、多くの人にとってまだ馴染みがないかもしれませんが、威力のグローバル市場における新たな顔となり、威力電器の世界市場での新たなポジショニングを象徴しています。

威力の国内での伝統的なイメージとは異なり、Kumioはシンプルでモダン、スタイリッシュな製品デザインを重視し、グローバルな消費者のニーズにより適合しています。威力はKumioを通じて小型家電、特に製氷機やアイスクリームメーカーなどのキッチン家電を中心とした製品ラインに特化しており、これらは欧米市場で特に人気があります。

また、海外進出の手段として、威力は従来の販売代理店チャネルに直接依存せず、Amazonを通じて迅速に海外市場を開拓しました。Kumioブランドは、発売からわずか1年で、革新的な製品と差別化された市場ポジショニングにより、400万ドルの売上を達成しました。

このように消費者に直接アプローチし、中間コストを削減し、ソーシャルメディアを通じて世界中の消費者と交流を築く方法は、威力のブランド認知度を急速に高めるのに役立ちました。

もちろん、威力の越境ECの道は単にプラットフォームに依存するだけではなく、ブランドのマーケティング戦略とソーシャルメディアの的確な活用に重点を置いています。今日、ソーシャルメディアはグローバルなブランドコミュニケーションの重要なチャネルとなっており、威力はこのトレンドを的確に捉えています。

威力は海外のインフルエンサーやソーシャルメディア上の影響力のある人物との協力を通じて、Kumioブランドの影響力をさらに拡大しました。アメリカ、ヨーロッパ、東南アジアなどの市場では、威力は現地のインフルエンサーと協力し、「品質保証」を核としたブランド宣伝を展開し、製品の「高いコストパフォーマンス」と「耐久性」を強調しました。特に若者の間では、Kumioはモダンな外観と強力な機能により、すぐに家庭に欠かせない小型家電となりました。

綿密に設計されたソーシャルメディアキャンペーンを通じて、威力は「老舗国産ブランド」というイメージを現代的に包装し、伝統的なブランド価値とスタイリッシュな越境ECイメージを融合させることに成功しました。これにより、海外の消費者は、この中国ブランドが「潰れていない」どころか、非常に「クール」であることを再認識しました。

統計によると、威力の2021年の海外売上高は350億元を突破しました。この成果の背景には、製品革新、越境ECチャネル、ソーシャルメディアマーケティングにおける的確な戦略があります。

製品ラインの継続的な最適化、ブランドコミュニケーションの強化、柔軟な市場戦略の実施を通じて、威力は世界の複数の市場で確固たる地位を築くことに成功しました。欧米の先進市場であれ、東南アジアやラテンアメリカなどの新興市場であれ、Kumioブランドは大きな注目と販売実績を獲得しています。

現在のところ、TikTokやYouTubeなどの海外主要ソーシャルメディアプラットフォームに公式アカウントを開設していませんが、AmazonなどのECプラットフォームでの力強いパフォーマンスにより、Kumioのブランド人気は高まり続けています。さらに、多くのユーザーが自発的にこれらのプラットフォームでレビュー動画やおすすめコンテンツをアップロードし、ブランドの影響力をさらに拡大しています。ブランドのソーシャルメディア戦略が徐々に展開されるにつれて、Kumioのグローバル市場展開は間違いなくさらなる飛躍を遂げるでしょう。

「老舗国産ブランド」からグローバルブランドへ

威力洗濯機の海外進出の物語は、典型的なブランド変革の物語です。「洗濯機の王者」から越境ECの新たな寵児へと変貌を遂げた威力の成功は、高品質な製品に依存するだけでなく、伝統を打ち破り、グローバル化とデジタル化の時代の波を受け入れる勇気にあります。

現在、威力はKumioを通じて世界市場に進出しただけでなく、ソーシャルメディア上で強力なブランド効果を蓄積しています。これは、老舗国産ブランドが新しい時代にどのように華麗な変身を遂げることができるかを証明し、他の伝統的ブランドのグローバル化への道に参考となる経験を提供しています。

かつて威力の「倒産」をネタにしていたユーザーたちにとって、この「老舗国産ブランド」が、静かに世界の家電市場の新星となり、より多くの家庭に質の高い生活をもたらしているとは、思いもよらなかったかもしれません。