ある一般ユーザーがアップロードしたショート動画がきっかけで、中国のスリッパブランド「朴西(Puxi)」が海外で大ヒットした。動画の中でユーザーはスリッパの柔らかな履き心地を「踏んだ感覚(踏み心地)」と表現し、コメント欄には各国の言語で「ハハハ」や「同じのが欲しい」といった声が殺到。この偶然の産物とも言える動画は、1週間で再生回数50万回を突破し、朴西のスリッパ売上を500%も押し上げた。

これこそがTikTokの魔力だ。ユーザーが自発的に拡散する「口コミ効果」は、広告費をかけるよりも効果的な場合がある。しかし、ブランドの海外展開は運だけに頼るわけにはいかない。

出典:ネット

「ユーザーの言葉」で興味を引きつける

海外市場で最も難しいのは、往々にして製品そのものではなく、いかに消費者にブランドを「理解してもらうか」である。

化粧品ブランド「花洛莉亚(Florasis)」の躍進はまさにこの点を捉えたもので、ストレートな手法で東南アジア市場を攻略した。彼らは現地の消費者が直感的な色味比較コンテンツを好むことに気づき、リップグロスの発色と質感をシンプルに見せるショート動画を投稿。華やかなセットやフィルターは一切なく、この「シンプルでストレート」な動画は最終的に1250万回再生、12万のいいねを獲得し、売上を急上昇させた。

核となるロジック:ブランドは「ユーザーを教育する」という姿勢を捨て、代わりにローカライズされた言葉やシチュエーションで消費者と対話する必要がある。それは面白いネタであれ、実用的なレビューであれ、同じことだ。

出典:TikTok

本当の口コミは広告よりも「売れる」

TikTokでは、ユーザーが自発的に作成するUGC(ユーザー生成コンテンツ)こそが真のトラフィックの鍵である。

家庭用洗剤ブランド「Seaways」はこの点を熟知している。彼らはユーザーに「製品使用前後の比較」動画を撮影するよう促した。汚れたカーペットが洗剤で見違えるようにきれいになり、油汚れがこびりついたキッチンカウンターが一瞬でピカピカになる…。こうしたリアルでほぼ「乱暴」とも言える比較映像が消費者の痛点を直接刺激し、売上を200%押し上げた。

ウォルマートのような小売大手でさえもこの流れに乗っている。彼らは#DealDropDanceチャレンジを開始し、ユーザーにスーパーの通路で踊る動画を撮影するよう呼びかけ、最終的に1700万人のフォロワーをカバー。エンターテインメント性のあるコンテンツで、広告とソーシャルの境界線を曖昧にした。

出典:TikTok

ユーザーと「一緒に楽しむ」ことで持続的な成長を

TikTokの本質は興味関心のコミュニティであり、ブランドはユーザーと「楽しむ」方法を見つける必要がある。TikTok上で消費者が購入するのは製品だけでなく、参加感やアイデンティティの承認でもある。

アウトドア家具ブランド「Kullavik」は、製品を「ソーシャルメディア上の通貨」に変えることでトラフィックをコンバージョンに結びつけた。彼らは87人のインフルエンサーと協力し、107本の開封・組み立て動画を公開。さらにはユーザーがライブ配信でブランコチェアに寝転がりながら会話する様子も配信した。この「没入型体験」により、単価200ドルを超える籐製ブランコチェアが20日間で170万元を売り上げた。

出典:TikTok

一方、化粧品ブランド「e.l.f.」のアプローチはさらに「シンプルでストレート」だ。彼らはユーザーがTikTok上で自発的に300万本ものブランド関連動画を作成しているのを発見すると、ブランド名そのままの#eyelipsfaceでチャレンジを開始。最終的に70億回の視聴を獲得し、キャンペーンソングがSpotifyチャートで4位にランクインするまでになった。

出典:TikTok

「心が動いてから購入するまで」の距離を縮める

どれだけトラフィックが大きくても、コンバージョンに結びつかなければ自己満足に過ぎない。B2Bの問い合わせであれ、C2Cの販売であれ、ブランドは製品特性に基づいて最短のコンバージョンパスを設計する必要がある。つまり、消費者が「衝動的に」行動したくなる瞬間に、すぐに行動できるようにするのだ。

国産化粧品ブランド「Colorkey」のベトナム市場における戦略は非常に参考になる。同ブランドは毎日更新を続け、すべての動画で現地モデルを使用して製品を紹介。ハッシュタグ#colorkeyの露出は2700万回を超えた。高頻度のインタラクションを通じて、彼らは「コンテンツで草を生やす(興味を喚起する)→ライブ配信でコンバージョン→ユーザーが再購入する」という循環を徐々に構築している。

出典:TikTok

結び:完璧さよりもリアルさが重要

海外展開するブランドは「ハイソで洗練された」イメージを追い求める必要はなく、むしろ肩書きを捨て、製品をユーザーの生活の一部にすることが大切だ。それは、TikTokで静かに中国の田舎料理を撮影している四川のおじさんのように。派手な編集は一切なく、ただ一杯の魚のスープが湯気を立てているだけの動画が、30万人もの海外ユーザーを魅了した。

結局のところ、TikTokを制するロジックはシンプルだ。ユーザーを消費者としてではなく、友人として扱うこと。それに尽きる。